老いと立ち向かう

2003.1.28

隔週の火曜日の午前中は、大人の生徒さんが何人か来られます。

今日は広島は朝から雪がちらちら・・・とても寒い日でしたが、
一人のお休みもなくみなさん来てくださいました。

その中で、なんと80歳になられたSさん・・・

寒いので、指の体操から時間をかけてやっていました。
その中で、左右の手のひらを向かい合わせて、
指の付け根の関節から折り曲げて、1本ずつ「指でおじぎ」をする体操・・・

1の指から順番にお辞儀をしていってたのですが、
4の指に来た時、どうしてか左の4だけ折り曲がらない・・・

一生懸命曲げようとなさるのですが、どうしても曲がりません。
「あら・・・言うこときかないですね、この指・・・」と苦笑い・・・
前回のときには、何事もなくさっと曲がったのに・・・

「老い」とはこんなものかもしれません。
何でもなくできたことが、ある日急にできなくなる・・・
何となくできていたことが、急に辛く思えてくる・・・

でもSさん、ピアノの演奏に入ると、そんなことは全く心配なく、
いつものようにさらさらと弾き始めてくださいました。

「愛の賛歌」「テネシーワルツ」「禁じられた遊び」・・・
レパートリーも少しずつですが増えてきました。

あれほど「難しい」と言っておられたペダルも、
とてもタイミング良く踏めるようになりました。

優しくて、丁寧で、気持ちのこもった演奏です。

きっと・・・
私の想像をはるかに超える時間、
言うことをきかない指と格闘しながら
毎日毎日練習なさっておられるのだと思います。

頭が下がります・・・

もう1人、そのすぐあとに来られる70歳のTさん・・・

この方は、まったくピアノ経験がなく、音符も読めない、
と言うことでしたので、私は大人向きの教本の、
音符にふりがなが振ってあるものを使うことにしました。
年齢から考えても、その方がうまく行くかな、と・・・

しかしその私の考えは、大ハズレでした。

昨年の11月頃だったか、
「ふりがなだけ見て弾いてしまうので、いつまでたっても
 音符が読めるようにならない・・・」
と自分の気持ちを話してくださり、いろいろ相談した結果、
幼児用の教材を使って1曲ずつ仕上げながら、
1つずつ音符も覚えていくことに方向転換しました。

それから2ヶ月弱・・・
今日のレッスンでは何と部屋に入って来られるなり
「先生、この本1巻全部最後まで弾きました。2巻を下さい!」
とおっしゃるじゃないですか・・・

あとまだ20曲くらいは残っていたのですが、
イッキに全部弾いてこられたのです。
きっと音符を読めるようになったのが嬉しくて、
頑張って練習されたのだと思います。

本当に、驚きました・・・

70代、80代の生徒さんのレッスンは、
生きていれば誰もにやってくる「老い」というものが、
どんなことなのか気付かせてもらう時間でもあります。

そして、この「老い」とどうやって立ち向かうか・・・と言うことを
教えていただく時間でもあります。

とてもとても、私にとっては貴重な時間です。

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